インフレ時代の省エネ支援の使い道


 

実質賃金は前年割れから浮上、持家着工は…?

実質賃金は2ヶ月連続でプラスとなり、ほんの少し先行きに明るさが見え始めただろうか。夏の賞与の影響が大きいとされるため、まだ半信半疑な実質賃金の上昇であるが、インフレの指標も上昇が落ち着くという見通しもあるため、好循環へ移りつつあるのかもしれない。悪い指標が長く続けばいつか底を打ち反転する。実質賃金は26ヶ月連続のマイナスから浮上した。一方、持家着工は32ヶ月連続の前年割れ、月次2万戸割れも11ヶ月続くが、これも底打ちが近いかもしれない。実質賃金と持家着工の動向は近しい動きでもあり、実質賃金プラスの維持が持家を上向かせる要素にはなりうる。持家着工は徐々に前年との差が縮まっており、8月着工は例年の動向からすると2万戸を超えた可能性がある。底打ちで前年比のプラス反転もそう遠くはなさそうだ。

 

一時しのぎの光熱費補助、根本解決は省エネ支援

インフレを抑えるため、日銀の金融政策による円高→輸入物価抑制、また政府のインフレ対策という名の補助事業等が施されているが、一時抑制は動向を見えづらくしている。ありがたいのは確かであるが、補助金による家計支援という一時しのぎでは根本解決にはならない。電気・ガス・ガソリン支援を再び実施しているが、既存の予算では不足と見られ、政府の24年度予算の物価高・賃上げ対応の予備費から9,800億円を支出することが決定された。ガソリンへの補助で7,730億円、電気・ガス料金支援として2,124億円を支出。今回の支出を含めて、これら補助金への予算総額は累計で11兆円を超えるという。22年1月からガソリン価格抑制の補助で計6兆3,665億円、23年1月から電気・ガス料金支援で3兆7,490億円。ここに約1兆円が加わる。
光熱費抑制の根本解決の手段の一つは、住宅ストックの性能向上である。ありがたいことに2024年の3省連携の住宅省エネリフォームへの補助金として、計2,515億円が充てられている。先進的窓リノベは1,350億円、子育てエコホームはリフォームに400億円、給湯省エネは580億円、賃貸集合給湯省エネは185億円。かなり手厚い補助金と言えよう。リフォームへの補助金は電気・ガス代の長期の抑制効果につながる。
ただ補助金だけ増えても意味はない。残念なのは、このリフォーム補助金も余りそうな進捗状況であるということで、9月頭時点では給湯器以外は予算枠の半分にも届いていない。ストックの良質化に対して補助を手厚くすることは、将来的にも大きな効果がある。施工の人手が足りないといった事情もあるかもしれないし、補助金そのものが一般消費者に知られていないこともあるだろう。潜在需要はあるはずであり、これからは冬に向けての断熱・省エネ対策として、消費者へのメリット訴求を強化し、せっかくの補助金、もっと積極的に使いたい。住宅ストック性能向上を急ピッチで進めることが求められている。

 

■図1.実質賃金と持家着工前年比推移
図1.実質賃金と持家着工前年比推移?

 

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