過度な円安、金利上昇の試練


 

不透明な日本経済

賃金と物価の好循環はやってくるだろうか。
直近発表では今年の賃上げは大手企業5.58%、中小企業でも3.62%となり、名目賃金は上昇し、2%の物価上昇率に対して、家庭のインフレへの耐性は増す方向に動いた。
この結果、いわゆる実質賃金がプラスに転じていくと思われるが、一方で負担軽減策が終了し、電力会社の値上げもあって光熱費は上昇。賃金が上がったとそう簡単に喜べる状況とも言えない。
定額減税も大きな消費活性化につながるものではなく、住宅への波及はほとんどないであろう。 

今、住宅市況が厳しいものになっているが、そもそもの日本経済が今後どうなっていくのか、実に不透明である点が、人生最大の買い物である住宅購入に踏み切ることを躊躇させている面はあるだろう。 
 

消費マインドを減退させる円安

一つは行き過ぎた円安という、日本に暮らす生活者にとっては実にネガティブな状況が続いているということ。
円安は輸出企業や海外で事業を行っている企業にとっては、円換算した時にプラスに働くため、23年度決算ではトヨタ自動車が5兆円の営業利益を出す等、極端にプラス効果があるようにも見える。
ただ行き過ぎと見られる1ドル155円内外という現状の水準では、悪影響の方が大きくなっていると言えよう。
輸入物価の上昇はインフレを強めるはずだし、エネルギー価格の上昇にもつながる。
そして海外旅行に行くのがばかばかしいくらい、日本が貧しく見えるということは心理的にもダメージは大きいだろう。 
 

マイナス金利解除でどうなる?

もう一つはこれまで極端に低かった金利が上がり始める転換期に差し掛かっているということである。
日本人はデフレ慣れが続いてきたように、異次元緩和により「金利はほとんどゼロに近い」という認識が染みついている。
この金融緩和策は、ローン負担を抱える住宅購入者にとっては大きな追い風となっていた。
ほとんど金利なしどころか、金利分以上に税金が戻ってくる住宅ローン減税が続いており、これこそ借りた方が得というマイナス金利状態だったわけである。 
その金利が上がり始めている。
長期金利の上限を撤廃し、マイナス金利解除を行ったわけだから、そうなるのは当然である。
日米金利差が縮まれば円高に振れるかと思いきや、日銀総裁の発言等から円安進行が強まる等、事態は混迷している。
長期金利、10年物国債の利回りが13年ぶりに1.1%を超えた。
住宅ローン金利は上昇の方向へ動き始めている。
企業の支払い利息の負担も増える。住宅市場にとっては厳しい試練の時である。 (関)

■賃金と物価の好循環はいつ? 円安と金利上昇で住宅購入はハードル上がる
賃金と物価の好循環はいつ? 円安と金利上昇で住宅購入はハードル上がる

 

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