新築住宅市場縮小期の次の一手


 

住宅着工70万戸時代へ

国内住宅市場の縮小のスピードが速まり、いよいよ新設住宅着工は70万戸時代に突入しつつある。
ただ住宅関連市場の裾野は広く、戸建が厳しいならば貸家、不動産、土地もある。ストックに目を向ければ、リフォーム、中古の流通もビジネスになる。視野を広く持てば拡大余地は広がる。更に建築事業という視点からは、住宅にこだわる必要はない。自ら持つ技術を何処に活かすか。
どんな建物が世の中に求められているのかを追求していけば、住宅会社の未来は必ずしも悲観すべきものではないだろう。 

 

純木造ビルの普及へ~AQ Groupの挑戦

AQグループが本社をさいたま市に移転した。2021年に本社移転を発表し、22年8月に起工式が行われ、1年後に構造見学会を実施。そして今年4月には純木造8階建の本社屋が竣工し、5月から本社を転居している。かなりスピード感のあるプロジェクトだったと言えるが、この本社屋は普及できる構法と価格帯を目指す実証実験ビル、「普及型純木造ビル」のプロトタイプとして完成させたものだ。今後純木造中規模建築物の普及を目指すというこのような取り組みこそ、住宅会社が更に飛躍して生き残っていくためのチャレンジだと言えよう。法整備が整わない中で、既存の技術を駆使して改良を重ね、これまで難しいとされていた耐力構造を創り出したということになる。 

同社はこの10年間、純木造による3階建までの中規模木造建築への挑戦をし続けてきた。2016年に埼玉北支店、17年につくば支店で純木造オフィスを建築。一般流通材を使用して、特殊な金物を使わずに9m×14m等の無柱空間を実現させたことで、日本初の試みとも言われる。今年竣工に至った上尾の実験棟では16m×32mの無柱空間を実現し、建築コストを2/3に抑えた純木造商業施設の施工法として特許を出願中である。 

2021年以降、本社建築プロジェクトとして、3階建に留まらず免震を使わない耐震構造による純木造で、最高高さ30m、床面積3,000㎡を超える最大8階建への挑戦が始動した。使いやすい材料を使い、特注の部材は使わない中、トライアル&エラーを繰り返し、8階建本社6,200㎡の建物を17ヶ月で完成させた。建築坪単価は145万円で完成したが、これは従来の純木造ビル施工で掛かっていたと見られる建築費の1/2であると言う。更にコストダウンを重ねて坪単価130万円を目指す。 

今回の本社屋建築による知見を活かして、中規模木造を普及させることが目標であるため、一般的な工務店やゼネコンでも施工可能である技術を採用している。材料と技術、価格と工期は普及可能性の高いものと言って良いだろう。環境貢献面からも木造建築のニーズは高まっている。住友林業、三井ホーム等も国内外問わず大型木造建築、木造ビルに力を入れる。中大規模木造建築は、新築住宅市場縮小の時代における次なる一手と言えよう。 (関)

■4階建以上の中大規模木造建築物を普及させるポイント
4階建以上の中大規模木造建築物を普及させるポイント

 

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