2024年度は供給が不足する?


 

住宅会社の2024年問題

4月は新しい一歩を踏み出す月である。入学、入社、そして3月期決算企業にとっては、年間の事業計画を積み上げていくスタートにも当たる。そして今年の4月は、2024年問題という、住宅会社にとって試練ともなる労働時間規制が始まる。 

2024年問題は住宅会社に、将来の事業の成長と働き方を考えさせる課題を突き付ける。人の確保と業務効率化が事業の成長を左右すると言える。人手不足が企業の力を削ぎ、受注量に制限が出ることで収益が悪化し、昨年度には人手不足倒産が前年の2倍の313件に達したという(帝国データバンク調べ)。中でも建設業や物流業が多かったようだ。 

積水ハウスグループの積水ハウス建設では、若い世代の働き手を増やすため、前年度の2.4倍にあたる人数を採用した。来年度も更に現場の採用人数を増やす予定だといい、この問題に真正面から取り組む。4月から大手企業では5.24%と、33年ぶりの高い賃上げが実施される。
効率的に働けて、その働きに見合う報酬が得られる企業に人が集まり、将来有望な企業の選別が始まるとも言える。 

住宅市場において、4月に新しく始まる制度には、建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度がある。省エネ性能を具体的に見える化し、消費者にとっては性能の比較をしやすくなる。住宅会社にとっては、働き手からも消費者からも厳しい基準で選別される時代が始まる年とも言えるが、良いものが選ばれるということは望ましいことであろう。 

 

2024年度の住宅着工見通し

住宅着工も2024年度としてのカウントが始まるが、着工が増えるという要素は見当たらない。住宅価格は下がる見通しはなく、消費者の住宅取得ハードルはここ2年くらいで一気に上がったと言えよう。23年度の新築住宅着工は貸家以外が苦戦した。持家は2月までの累計で約20.3万戸。3月着工が17,000戸に届かなければ、23年度は持家が22万戸を割る可能性が現実味を帯びている。建売住宅の2月着工は20年8月以来の1万戸割れ、通期では13.5万戸内外で着地するだろう。持家と合わせて35.5万戸程度の見通しである。 

着工が大きく減っているのは、第一に消費意欲減退による需要不足が要因ではあるが、一方でこれだけ着工が減っている中でも人手不足とも言われる。そして2024年問題を機に、更に人が足りなくなる。今の住宅着工が激減しているのは、需給共に不足しているためとも言えよう。住宅事業を継続する上で、需要を捕捉する以前に、作り手の確保について真剣に向き合うことが求められる。 (関)

■需要が減る中でも人材不足で供給不足に?
需要が減る中でも人材不足で供給不足に?

 

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