インフレを機にストック流通は新たなステージへ
今、リフォーム市場に吹いている追い風は、これからもまだ続くだろうか。
直近の1~2年の動向からは、受注、利益の両面で、新築戸建事業よりも堅調さが窺えるのは確かである。各種補助金の効果もあるはずで、需要そのものが活性化している。
一方インフレ下で、新築住宅を購入するハードルが上がって来ている。
つまりこれからストックの流通市場が、今までとは違ったステージに突入していく可能性がある。
ストック事業は流通とリフォームの両面で一体となって拡大していくということだ。
スムストックの進捗状況
大手ハウスメーカー10社が注力しているスムストックの2022年度成約実績は1,880棟と僅かに増加した。
TVCMからWEB動画広告等の販促に切り替え、動画広告のクリック数は3倍、WEB広告クリック数は2倍等、アクセス数も含めて反響は増えているようだ。
認知度は高まっているという実感はあるようだが、実績としてはまだまだ拡大余地は十分にあるはずだ。
10社の戸建ストック396万棟のうち、推計の年間流通棟数は11,200棟。
スムストックで仲介したのは17%と僅かな上昇に留まる。
■ スムストックの成約棟数推移
流通を促進させるカギとなるのが、中古買取再販である。
スムストック成約件数のうち、買取再販型の成約件数は309件と、前年の248件から25%増加しており、全体の16%程度が買い取られている。
スムストックの査定式を今年7月から改定し、脱炭素やレジリエンス対応等のため、ZEHやV2H、熱交換換気システム等、よりニーズに即したスペックを査定項目に追加した。
買い取った物件に対してZEH化する断熱リフォーム等を施すことで、優良物件の流通が促進されるはずだ。
買取再販を強化する積水化学のBeハイムは、前期は89棟まで拡大、仕入れは堅調で今期150棟の成約を計画する。
貯蓄率低下でリフォーム意欲はどうなる?
今のリフォームブームの一つのキッカケはコロナ禍の貯蓄と考えられる。強制貯蓄とも言われたこのコロナ貯蓄が終わりに近づいているという。
今年1~3月の貯蓄率がコロナ禍前の平均に戻りつつあるということで、インフレ下において生活防衛に入れば、自宅を改善したいというリフォームへの投資意欲も減退する可能性がある。
既存ストックを高い価値を持って流通させていく市場を早期に形成し、不動産とリフォームが一体となって、ストック市場を活性化させていく知恵が必要になっている。 (関)
■ 家計の貯蓄率はコロナ禍前の水準に近づく