人命を守る住まい
今年9月、関東大震災から100年という節目を迎えた。1923 年以降、現在に至るその間にも幾度となく、日本各地を巨大地震が襲い、甚大な被害をもたらして来た。
日本中どこに住んでいても、このリスクからは逃れられず、日本で暮らしていく中で、地震対策がどれだけ重要かということを改めて考えさせられる。
昨今の住宅性能に対しては、断熱性能に焦点が当たりがちではあるが、耐震性の高い住宅を供給することは最低限の義務で、人命を守る家を建てるということは住宅会社の最大の使命の一つとも言えよう。
ハウスメーカーとビルダーの新しい連携
積水ハウスが地震大国日本の住宅のために、耐震技術をオープンにするという新しい試みを発表した。
既に今年3月の中期経営計画の発表時において、SI事業としてこのチャレンジの大枠が語られていたが、具体的な現状の進捗が明らかとなった(特集Ⅲを参照)。
積水ハウスの持つ耐震性のノウハウ、施工力をパートナー企業に対して提供していくという試みで、1棟でも多く地震に対しての不安のない住宅を供給していこうという思いからの取り組みである。
耐震性能の肝である基礎から構造躯体までのいわゆるスケルトン部分を積水ハウスが施工する。
施主と契約を結ぶ元請けとなるのは、同事業のパートナーとなる地域の有力ビルダーで、これまでに例を見なかった、ビルダーとの共同建築事業で積水ハウスの技術を活かすというスキームは、一つの新しい事業連携の形が生まれてきたことを意味する。
■国内住宅ストックの良質化のために、積水ハウスSI 事業がスタート
技術共有で業界全体の質向上へ
世の中のためにプラスとなる技術というのは、特にそれが人命にも関わってくる場合には、広く共有することが望ましい。
もちろんビジネスの世界は競争で、特許を取得したりして他社にマネされることを防ぐ必要はある。
ただこれからの時代、特に新築住宅市場は縮小が本格的に始まっていく。小さなパイを奪い合い、過当競争によって、望ましくない住宅が供給されることは避けなければならない。
積水ハウスの今回の取り組みは、長年培ってその効果が実証された優れた技術は1社で占有するのではなく、オープンに共有してスピード感を持って普及させていくことが、これからは求められるという一つのメッセージである。 (関)