急落する持家復活の3条件


 

持家月次着工は4ヶ月連続1.9万戸割れ

2023年度の住宅着工は大幅なマイナスでスタートした。持家着工は依然として沈んだままで、4月も前年同月比11.6%減、5ヶ月連続の2 万戸割れである。
更に言えば、持家着工は4ヶ月連続で1.9万戸を割った。
各社の受注動向も回復には至っておらず、この数字を見る限り、上向く気配はない。
昨年度はインフレ等の外的要因によって、歴史的な低水準まで着工が落ち込んだが、今年度は更に底を割ってくるのだろうか。
それとも減り過ぎたリバウンドもあって、多少上向く期待も持てるのだろうか。
住宅市場環境は決して良好ではないが、日本経済全体には明るい兆しが見えて来ている。いくつかの条件が揃えば、住宅購入者にも少しは前向きな動きが出て来る可能性はある。 
 
■持家着工が急減する一方で、日本の景気は上向くのか?
持家着工が急減する一方で、日本の景気は上向くのか?

復活の3条件とは?

第一に、企業業績の好調さと景気回復。
今年5月には日経平均株価がバブル期以来の高値を付け、6月に入っても33 年ぶりの高値を更新し続けている。
外国人投資家の日本株見直し買いが引き上げている部分は大きいが、企業業績も伴って来ている。
事実上のコロナ禍収束により、インバウンド復活等、コロナ前の景気水準に戻ることが期待される。

第二に、企業の本格的な賃上げの持続。
今年は31年ぶりの水準となる4%程度の賃上げが実施されたと見られるが、これが一過性では値上がりする住宅購入というところまで消費者意識は及ばない。
収入が増えていくという期待の中での価格上昇であれば、購買意欲は上向く余地がある。

第三は、インフレが落ち着く、または賃金上昇を伴う持続的なインフレ下に突入するということ。
日本人の感覚の中にも、以前よりデフレからインフレへという移行が受け入れられ始めている。
特にインフレ経験のない若年世代においてもその傾向は見られるため、物価全体が上がっていく中で家を買うことの不安を払拭し、住宅の資産価値やライフサイクルコスト、QOLの向上等が理解できるようになれば、住宅購入を決断しやすくなるはずである。

一方、住宅ローン金利上昇懸念は残る。
固定金利は上昇し金利先高観は一時的な後押しにはなるが、上がり過ぎた時のダメージへの対策も必要だ。
残価設定型等、新たな住宅ローンの登場による資金計画の多様化など期待できる余地はある。
物価が上がり、賃金が上がり、人件費分を価格に転嫁するという正しいプライシングを踏まえた好循環に日本経済が移っていくことが必要条件となりそうだ。(関)
 

もっと月刊TACTの記事を読む

※無料試読のお申込みはこちら

by .