集中豪雨が襲う災害国ニッポンの家づくり

  ここ1ヶ月、サッカーワールドカップの熱戦に沸いた日々であったが、一方で大阪北部地震と西日本豪雨という大きな災害が日本を襲った。住宅、人々の暮らしが無残にも打ち砕かれる様子を目の当たりにし、改めて自然災害の恐ろしさを痛感した。自然の破壊力の前に、人はなすすべがない。
 河川氾濫等で1万棟以上の建物が浸水するなどした豪雨は、2004年以降で11回も発生しているという。今回は平成で最悪の被害状況だったということだ。災害で学ぶべきことは必ずあるはずだが、予算や時間の問題もあり確実な対応は難しいのだろう、こういった被害は何度も繰り返されている。
 住宅業界としてなすべきこととしては、まずは被害地区の復興・支援が最優先である。すぐに対処できる機動力も企業の価値を高めることになる。こういった点では大手が強く、例えば非住宅も含めて被災エリアに91,000棟のストックがある大和ハウスは、現場確認を急ぎ、救援物資等も早期に行った。住友林業は床下浸水は無償で、床上は5万円で清掃、補修を行うという。地域の家守りであるビルダーも、こういった救援体制を早期に整えたい。
 第二には、改めて防災を考えた住宅の建築である。地震以上に水害の場合は破壊力があるため、完全に住宅を守り切ることは難しいが、耐震性以外の面で強度のある住宅、またエネルギー等の自給自足という住宅も強く意識されるだろう。
 第三には、立地を考慮した家づくりである。今、別の意味でコンパクトシティを目指し、都市の立地適正化の問題が盛んに言われている。国土が狭く、山や川が多い日本では、災害は隣り合わせであるが、人が住む場所というのは、極力災害リスクの低い場所であるべきだ。住み継がれてきた場所を簡単に移れないのはもちろんであろうが、人々の永年の歴史の中でもう少し早い段階で棲み分けられてこなかったのかと思い悔やまれる。
 東日本大震災の教訓としては、高台への移転ということも行われた。広島県は数年前にも土砂災害によって尊い命が奪われ、また北部九州は2年連続して集中豪雨の被害に見舞われている。早期に災害リスクも含めた立地適正化へ向けた都市の再構築計画を立てるべきであろう。自然現象による被害は、近年ひどくなっている。これからもまだどんな集中豪雨が襲うかもしれず、住宅業界としても安心安全な街を創って住民の移転を誘導する等、何等かの対策が望まれる。
 住宅は躯体が重要である以前に、まず立地、地盤は重要である。災害リスクの高い立地には住宅を建てるべきではない。住宅業界にとってやれることに限界はあるが、それでも災害から極力人命を守るという意味でも、ストックからリスクを減らすよう、見直していくことも必要だろう。一歩ずつであろうが、安心して暮らせる国を作りたい。(関)

 

 

もっと『月刊TACT』の記事を
読みたい方は こちら

 

 

by .