2017年、住宅市場は転機を迎え、市場構造や勢力図の変化が起こった年と言えるだろう。まず賃貸住宅市場が失速し、マイナスに転じた。2016年度は出来過ぎなくらいに賃貸着工が伸び、住宅着工は上振れた年の反動である。引き続き堅調に推移しているのは建売住宅で、オープンハウスを始め、大手分譲系は好調に推移した。ビルダー上位陣は業績好調で、低層住宅でビルダーが県№1を取った数が初めてメーカーを上回った。ビルダー上位のシェアも一段と拡大した。
業界再編が動き出した年でもある。16年末に発表された、トヨタホームのミサワホーム子会社が実際に動き出し、10月にはパナソニックがパナホームを完全子会社化。M&Aの動きも活発化した。特に目立ったのが、ハウスメーカーによるゼネコンの買収や資本提携である。11月に発表されたのは、住友林業と熊谷組の資本提携。そしてパナソニックは松村組を傘下に収めると発表した。新築住宅市場の先細りを見据え、各社非住宅にも力を入れ始めた。
同時に海外強化も進み、住林、大和、積水の3社が海外企業の買収等、国内市場に留まらない動きが活発化した。
ストック市場では、空き家問題に注目が集まった一方で、引き続き中古マンションの動向は好調であり、買取再販ビジネスも多くの企業が注力した。大手ハウスメーカーはスムストックを強化し、空き家活用の一つとして民泊事業への参入表明も多く見られた。今年6月には民泊新法が施行され、市場は活発化しよう。また今年は4月からの安心R住宅始動や改正宅建業法によるインスペクション斡旋も進み、今まで以上に中古流通は活性化する年になる可能性がある。
戸建住宅以外の分野が目立った年とも言えるが、AI、IoTでの市場開拓にも取り掛かり始めた年でもあり、あらゆる面での住宅市場の転機の時期が訪れている。今年も増税へ向けての最後の1年とあり、大きな動きが出てくる年となりそうだ。(関)
2017年10大ニュース
①賃貸住宅が失速、過剰懸念もあり、市場牽引役がマイナスに転じる
②券売住宅は好調維持、飯田4万棟、オープンハウスは大躍進
③上位ビルダーが業績好調、県No.1ビルダーが増加、上位棟数シェア上昇
④業界大再編が進む、トヨタ+ミサワ、パナソニック一体化、ビルダーM&A
⑤ストックビジネスが伸びる、買取再販増加、中古マンション好調、安心R住宅も
⑥AI、IoTで住宅業界の将来図が見え始める、一部ではZEH 普及も進み二極化
⑦空き家問題、民泊などの新しいビジネスが注目され始める
⑧非住宅への取り組みも強化、ハウスメーカーとゼネコンの提携が進む
⑨海外への進出が加速、住林、大和、積水の海外売上高が急上昇
⑩大手富裕層高額化、天井高商品、一方で普及価格帯での商品化も進む
2018年展望
①前半市場は株価上昇が支え、後半は増税前の駆け込みへの動きへ
②券売住宅は依然好調が続く、オープンハウスエリア拡大、中堅も躍進続く
③上位ビルダー、県No1ビルダーの好調は続く、後半勢い増すか
④事業継承含めたビルダーM&Aは続く、異業種による買収、ビルダー同士の経営統合
⑤安心R住宅始動とインスペクションで既存住宅流通が加速、中古マンションは在庫が増加で価格は頭打ち?
⑥IoT住宅が少しずつ認知、大手ハウスメーカー各社が展示場でアピール合戦
⑦民泊新法施行で、新たなビジネスが開花、空き家対策問題への取り組みも強化
⑧非住宅はビルダーでも注力、CLT活用、ビルダーのゼネコン提携も
⑨大手ハウスメーカーの海外売上高比率上昇、ビルダーでも進出画策進む
⑩大手メーカーの普及価格商品、富裕層向け高価格帯は好調
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