住宅着工増減の歴史
住宅着工が減少期に入ったのは、1997年からである。
減少期はこれからも続くはずだが、既に今年で四半世紀ということになる。
この間、もちろん毎年減り続けていたわけではなく、4年間の増加期が2回ある。
1回目は2003~06年度の4年間。
牽引したのはマンションと貸家である。
4年間の増加率は9.5%、06年度着工は128.5万戸で、この四半世紀では最も多い着工となった。
マンションは20万戸超えは当たり前、貸家も50万戸を超えて推移した。
この頃建築された住宅は今ちょうど改修時期であり、マンションリフォームは狙い目である。
ただこの後、建築基準法の改正、リーマン危機が相次いで起こり、2009年度への3年間で一気に70万戸台まで急減する。
この3年間の下落率は約40%で、業界に相当なダメージがあったことが窺える。
この後、住宅着工は二度と100万戸を超えることなく、現在に至っている。
あまりにも落ち込み過ぎたが、急回復とはならず、4年間に亘ってどん底から回復していく。
2回目の着工増期は2010~13年度で、緩やかなリバウンドから消費税8%への増税前駆け込みへとつながっていった。
4年間の増加率は27.4%と、さすがに減り過ぎた着工を取り戻す動きとなった。
その後は増税先送り等があり、株高や低金利政策もあって、一進一退の住宅着工が続いている。
10%増税とコロナ禍で2020年度は、リーマン危機後に次ぐどん底の水準まで落ち込むが、コロナ特需という想定していなかった追い風も吹いた。
浮き沈みはあるものの、5年平均で見た住宅着工では、この15年間は概ね横這いを維持していることが分かる。
■減少期の四半世紀、住宅着工戸数推移 5年平均での住宅着工推移
次の四半世紀はフローとストックのバランスがカギ
これからの四半世紀も、新築住宅着工は減少が続いていくことには違いないが、ストックをうまく使っていこうという意識が強くなっていくはずである。
よって新築住宅着工という指標だけでは、住宅業界の全容を把握できなくなっていく。
フローとストックをうまくコントロールできる会社が生き残っていく業界になるだろう。
私事ながら、住宅産業研究所に入社して、ちょうど25年が過ぎた。
斜陽産業と言って、会社を離れる同僚もいた。
住宅着工減少期しか知らないが、住宅業界は変化しながら、コロナ禍を経てまた新たなステージへ入っていく段階にある。 (関)