住設大手は「海外で稼ぐ」体質に
ここ数年の間に、住宅会社の海外進出が加速した。以前は住宅は国内の産業で、米国住宅市場の動きは遠い国の話だと思っていたが、コロナ禍でウッドショック等を経験し、海外情勢が国内住宅市場に大きな影響を与えることが明らかになった。
考えてみれば、住宅設備メーカーは海外売上比率が高いし、木造建築には輸入材を多く使っているのだから、世界情勢や為替の影響が大きいのは当たり前のことである。
21年度第Ⅱ四半期時点のLIXILとTOTOの売上と利益を国内と海外で比較すると、どちらも売上では国内が7割前後と国内ウエイトが高いが、利益で見ると海外もかなり国内に近い利益を出している。
つまり海外の方が利益率は高く、設備メーカーの海外依存度は高いと言えるだろう。
住友林業は国内外比率逆転
そして急ピッチで拡大しているのが、住宅会社の海外進出である。今の住宅会社の中で、最も海外事業のウエイトが高いのは、住友林業であろう。
住友林業も海外企業M&A による事業強化が進んだのは、まだ最近のことであるが、2020年度には国内外の住宅の比率が逆転し、21年度第Ⅲ四半期時点では、国内対海外売上が45:55、利益では16:84と海外が国内住宅を大きく上回る。
海外M&Aを強化し続け、特にコロナ以降の米国の住宅市場が好調であることから、今期見通しでは海外住宅で6,350億円と力強く全体を牽引する。
営業利益は980億円と全体の7割以上を海外で稼ぐ大きな柱に成長する見通しだ。
また米国で現地REIT運用会社と共同で約1,100億円を投じ、戸建賃貸住宅の大規模開発にも着手し始めた。
賃貸志向が強いとされる20 ~ 40歳代のミレニアル世代向けに、郊外を中心に3年間で3,000戸を供給するという。
50~200戸の区画に分け、住林子会社のクレセント社等が宅地開発をし、REIT グループ会社が賃貸管理を手がける。
住林は海外で現地会社のグループ化を進め、堅調な海外住宅市場の恩恵を受けてきた。
コロナで分断された世界においても、この流れは加速しそうである。
■国内と海外の売上・利益の比較
個人の不動産売買もグローバル化進む
一方で、インバウンド需要も復活し、海外投資家による日本の不動産取引も活発化している。
日本の不動産はまだ安いからと、中国人投資家による都心のワンルームマンション等の購入が増えてきたという。
中国の「共同富裕」スローガンへの警戒から資産を日本に移す動きだ。
不動産事業に国境はなく、オープンハウス等は日本の富裕層向けに米国不動産の販売を促進する。
世界中がつながっており、国内でも海外でも需要に対して優良な住宅を供給していくことが、住宅会社の使命だろう。
脱炭素に貢献する住宅はチャンスも大きいかもしれない。 (関)
■海外投資家の日本の不動産取引前年同期比
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