住宅価格、適性な値上げを
住宅原価が上がるという話ばかりが出てきている。ウッドショック、省エネ基準義務化、労務費の上昇、更にはZEH 基準義務化へと、住宅はこれからますます高くなっていくと見られる。
適正な値上げをしないと、利益が出なくなっていくはずだ。
営業現場は価格が上がると売りにくいから、あまり上げて欲しくないというだろうが、そもそも住宅価格は安くなりすぎたのかもしれない。
一方今高いと感じるのは都心部マンションで、15年前と比べると格段に上がっている。2005年前後に東京23区内で販売されていたマンションは4,000万円台で70 ~ 80 ㎡というのがザラにあった。
今はそんなマンションはほぼ存在せず、当時のマンションを中古で売り出せば確実に買った時よりも高く売れる。
それくらい都心部マンション価格は上がっていると考えて良い。
2000年代前半からローコストビルダーが台頭してきて、住宅価格は確かに低下したところはある。
日本経済がデフレ真っただ中であったため、そういう流れは世の中にマッチしていた。ただこれからは住宅価格は値上げをしていくべき時に差し掛かっている。
ハウスメーカーは意図的に価格を上げてきており、積水ハウスの戦略は完全に高価格帯へのシフトを狙っている。
ローコスト大手の代表であるタマホームやヒノキヤグループも値上げを随時行っている。それでもしっかり受注は伸ばしており、値上げしたから売れなくなるということはないはずだ。飯田グループも今期に入ってから平均販売価格は200万円程度上昇した。
暴利を得るための値上げは論外としても、適正な価格で住宅を提供していくことは、必要不可欠と言える。
2年後に迫るインボイス制度
追い打ちを掛けるように、2023年10月からインボイス制度が始まる。
詳細は省くが、ポイントはインボイス制度下では、課税事業者が免税事業者との取引で支払った消費税は、仕入税額控除を受けられないということ。
支払った消費税分は、課税事業者が自腹を切って納税することになるという。
下請の分の消費税も支払うということになると、大幅にコストアップするため、住宅販売価格の値上げは必須課題ということだ。
今年10 月から登録申請の受付がスタートし、2年後から運用開始ということだ。
コストカットも急務
まずは価格の見直しを適正に行っていくことが必須となる。
そして業務効率化を図るためにも、DXの推進は欠かせないだろう。
9月に首相直轄のデジタル庁が始動したが、コロナ禍によって住宅業界でもデジタルシフトは半ば強制的に進みつつある。
建築現場、営業、その他業務においても、効率化によって抑えられるコストはより抑える。
値上げとコストカットで、迫り来る原価、経費アップを乗り越えなければならない。 (関)
■住宅価格の上昇にどう対処するか
JSKコラム(2021年)住宅業界新型コロナ月刊TACT