先日、桧家住宅が主催する「伊那CLT実験棟構造見学会」に参加させて頂きました。見どころは「CLT」という国内の住宅業界ではまだ浸透していない集成材です。CLTの正式名称は「Cross Laminated Timber」。建築材料としてのメリットは、寸法安定性の高さ、厚みのある製品で高い断熱・遮音・耐火性を有することや、成熟期を迎えた国内の木質資源を利用することによる環境性能の高さなどが挙げられます。また、CLTパネルを用いることで、プレファブ化や、接合部のシンプルさなどによる施工性の速さや、RC造などと比べた場合の軽量性も大きな魅力です。CLTは事務所などの非住宅で実証実験が進められていますが、桧家住宅では一般住宅に採用しました。
実験棟は、CLTが持つ木の質感や量塊感を感じさせる設計でした。柱なしで1.82mの跳ね出しを作れるのはCLTならではです。軒裏から室内の天井までをCLTで仕上げ、CLTが住宅内外を連続しているような印象です。また、吹き抜け周りや階段もCLTの木口の表しとして残し、木の重厚感を感じさせます。
一方、CLTパネルのプレカットの精度向上が必要であったり、パネル搬入のトラックが大きい為に搬入経路が限定されるなど課題も残されています。また、実験棟の原価は通常の住宅の約2倍とのことで、CLTパネルの単価改善も必須です。桧家住宅でも住宅として商品化するにはまだ時間がかかると見ています。
実験棟完成後は、跳ね出し部分の揺れ、たわみが住宅に与える影響や防水性などCLTの特性を検証する予定です。単価問題に関しても、桧家住宅独自の規格材の制作や、プランニングを限定することによるコスト低減を検討しています。今後CLT工法の実現化に向けた取り組みがなされていく予定で、CLTが創出する意匠性、住宅業界への普及に期待しています。(斎藤)