前年ハードル高いが一昨年水準も下回る
大手住宅メーカー10社の20年3月受注は、全体の受注棟数ベースで前月比12ポイント低下の前年同月比▲21%、12カ月連続減となった。丸一年、プラス受注に浮上できなかったことになるが、前年3月は消費増税前の駆け込み需要があったため前年同月比18%増とハードルが高い。
しかも、最近の住宅市場は展示場集客や商談絶対数のマイナス基調、様子見・長期化の常態化、消費増税によるマインド低下、さらには新型コロナの感染拡大など厳しい受注環境が続いている。
こうした厳しい状況を勘案するとボリュームの大きな3月受注の▲21%は予想以上に健闘したとも評価できそうだが、一昨年水準では93%に留まる。やはり厳しい状況に変わりはない。
受注ベースのコロナショックは3月中旬以降
受注ベースでみると新型コロナの影響が本格的に出始めたのは3月中旬以降であり、3月前半はまだ比較的順調に受注できたようだ。当然、3月前半の受注には1・2月のズレ込み案件も含まれているが、住宅ローン減税や次世代住宅ポイントなどの各種住宅取得支援策、ZEH補助金なども後押しになった考えられる。
しかし、新型コロナの感染拡大とともに、住宅計画者の先行き不安が拡大。特に3月中旬以降は、計画通り商談が進まないケースが増えており、「契約は新型コロナが落ち着いてからでいい」という商談客も少なくない。
これまでにも来場・商談客の様子見や計画・商談期間の長期化は常態化していたが、さらに、新型コロナの感染拡大が様子見・長期化に拍車を掛けている。
集客ベースではイベント中止もあり既に大幅減
一方、受注の先行指標となる集客ベースでは、既に集客イベント中止など新型コロナの影響が拡大しており、大手10社の3月集客は前年同月比▲30%と大幅な落ち込みとなった。前年3月集客は前年同月比±0%であり、一昨年水準でも70%の低水準となる。
厳しい市場環境下での来場者は比較的中身が濃いものの、来場・商談客の絶対数減に歯止めがきかない。
さらに、新型コロナの感染拡大に対応し、政府は4月7日に東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発令、16日には緊急事態宣言の対象を全国に拡大した。こうした動きを受け、住宅各社も展示場見学を原則「予約制」とするところが大半であり、一部閉鎖の会場を含め4月以降の集客は大幅減となることが予想される。
例年であれば集客の山場となるGWが間もなくスタートするが、今年は閑散とした総合展示場が想像される。
コロナ危機を乗り切り未来につなぐ
確かに、新型コロナの感染拡大は大きな危機であり、住宅業界にとっても暫く厳しい市場環境が続くことが予想される。しかし、厳しい市場環境の中でも住宅各社は既に「WEB商談」を前面に訴求するなど、新しい動きを見せ始めている。
恐らく、新型コロナをキッカケに社会や市場の仕組み、人の考え方や価値観も大きく変容するだろう。プラス思考で【住宅】と関連付ければ、住まい方・暮らし方などが改めて見直され、住宅が再認識されるキッカケになるかも知れない。
いずれにしろ、住宅市場やユーザーの変化をいち早く読み取り、柔軟に対応することが重要になるだろう。今は、非常に厳しい状況にあるが、“明けない夜はない”。知恵とアイデアで何とかコロナ危機を乗り切り、明るい未来につなげたい。(岩澤)
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