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外国人労働者 建設業は5年間で最大4万人を受け入れ
外国人労働者の受け入れ拡大を目指した法改正をめぐり、議論が進んでいます。従来、技能実習生らに限ってきた単純労働について、新在留資格を設けることで、外国人労働者のより幅広い業種での活用を図る狙いです。
新在留資格「特定技能1号」
法務省が示した案によると、新在留資格「特定技能1号」の対象となるのは14業種で、2019年度からの5年間の受け入れ見込み数は最大約34万人としています。業種別の最大人数を見ると、介護6万人、外食5万3千人、建設4万人等となり、これらの人数を上限として、業種ごとに外国人受け入れ数を管理していく方針のようです。
建設は21万人の人材不足
住宅業界としては建設業の数字が気になるところですが、14業種中3番目に多い人数が計画されており、影響が大きい業界ということになります。というのも、5年後の人材不足見込み数において、介護30万人、外食29万人に次いで建設は21万人の人材不足となることが背景にあります。
外国人労働者は増加
また、外国人労働者は将来ではなく現在の問題でもあります。外国人労働者は現在も増加しており、2018年は146万人と10年前の2.5倍に達していると見られ、統計を取り始めて以来最大となりました(厚生労働省調べ)。現在、建設業で働く外国人の7割は技能実習生と見られ、外国人労働者の受け入れが本格化すると、彼らの待遇改善にもつながると考えられます。外国人労働者をめぐって、建設業と他産業との人材獲得競争が始まります。
■在留資格別外国人労働者数の推移
※資料)厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ」2018年10月末現在
建設キャリアアップシステムの運用開始
日本の労働者人口が減少する中、建設業の現場を担う技能者を確保するには、他産業と比べて生涯を通じて魅力的な職業であることを示す必要があります。現実には、建設業の年齢別賃金のピーク時期は製造業全体より早く、40歳前後に到来しています。これは、現場での管理能力等の経験に裏付けられた能力が適切に評価されていないことの現われと考えられます。また、建設技能者は異なる事業者の様々な現場で経験を積んでいくため、一人ひとりの技能者の能力が統一的に評価される業界横断的な仕組みが存在せず、スキルアップが処遇の向上につながっていかない構造的な問題があります。
建設キャリアアップシステム
こうした現状を変革するため、2015年5月19日に開催された建設産業活性化会議において、建設技能労働者の経験が蓄積されるシステムの構築が表明され、「建設キャリアアップシステム」として2019年1月から一部の現場で運用が開始されました。同システムでは、本人確認したうえでシステムに登録し、IDが付与されたICカードを交付されます。このICカードに、いつ、どの現場に、どの職種で、どの立場で働いたのか、日々の就業実績として電子的に記録・蓄積されます。同時に、どのような資格を取得し、あるいは講習を受けたかといった技能、研鑽の記録も蓄積されます。
同システムは2019年4月からの本格運用を予定しており、開始後1年で約100万人、5年後に全ての技能者の登録を目指すとしています。建設業の労働力不足や建設現場の労働環境の改善につながるか、今後の進捗を見守りたい新しい取り組みです。
(脇田)
■建設キャリアアップシステムの概要
※資料)一般財団法人建設業振興基金
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