大工不足対策のための施工効率化

住宅会社の成長戦略において、営業人員の増強やエリア戦略、商品開発といった「売る」ための戦略を強化するだけでなく「作る」、「建てる」こと、すなわち販売力に見合う生産性の向上も重要な課題である。生産性の向上はコストダウンに直結し、顧客満足にもつながる。

しかしながら、現場で家を「建てる」大工の不足は深刻化してきている。国勢調査によると、2015年時点での大工の人数は35万人。30年前と比較すると1/2以下となっている。特に2000年以降は毎年約10万人のペースで減少しており、大工の減少は急加速している。

野村総研では、今後も大工の人数は減り続け、2030年には21万人まで減少すると予測している。将来的には住宅着工戸数自体も減少していく見込みではあるが、野村総研では大工の人数の減少幅が住宅着工の減少幅を上回ると予測している。仮に大工1人当たりの新設住宅着工戸数が2戸だった2010年のバランスが適正だったとすると、2030年には約60万戸の住宅市場規模があっても、大工1人当たりの生産性を1.4倍にまで引き上げないと、現場を賄いきれなくなると指摘している。

大工の高齢化も進んでおり、2015年時点では60歳以上の大工が38.7%を占めるようになっている。高齢となった大工が次々と現役を退いている一方で、新たな人材が流入してきていないことは、住宅業界が抱える大きな問題として顕在化してきている。

大工不足対策として考えられるのは、第一に大工の人数自体を増やすこと。労働環境の改善や魅力ある職業としてのアピール、外国人労働力の受け入れも今以上に必要となってくるだろう。大工を社員として採用し、育成しているビルダーも少なくない。

第二に施工の効率化。より施工しやすい部資材や工法の開発によって、生産効率を高めることで大工1人当たりの負担を減らすことだ。

第三に間接部門の効率化。現場監督と職人とのやり取りや、細かな事務作業に費やす時間も積み重なれば、現場の効率化、生産性の向上を阻害する要因となる。これまでFAX、電話や紙の書類で管理されてきた業務は、ITによって効率化でき、情報の漏れや伝達ミスを防いで無駄を省くことにもなる。

『TACT』8月号特集では、施工の側から見た住宅会社の生産性向上について取り上げる。(布施

この記事の著者

布施 哲朗

2007年8月に住宅産業研究所へ入社。TACT編集部、マーケティング部を経て、2011年12月にTACTデスク、2018年11月にTACT編集長に就任。
同誌では、ビルダーを中心に全国各地の住宅会社へ直接取材を行い、最先端の商品戦略・営業戦略の情報を収集し記事を執筆、他媒体への記事提供も行う。一方で、建売住宅、リフォーム、海外市場など、多分野の調査資料を作成する他、受託調査、講演、セミナーも行っている。

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